マークジェイコブスがLOUIS VUITTONを去るという衝撃を受け、昔を思い出した。
高校の修学旅行はグアムで、ブランドBagに点で興味がなかったわたしでも、さすがに免税店。入ります。
その年は1998年。マークジェイコブスがLOUIS VUITTONのデザイナーに就任し、高校生のわたしには地味な印象しかなかったモノグラムに新しい息吹、『ヴェルニライン』が誕生した年。モノグラムを型押ししたカーフスキンはカラフルにエナメルコーティングされて、とびきりフレッシュで、胸がドキドキしたのを覚えている。高校生にしては立派な買物ではあるがBagには手が届かないので、何て名称なのか分からないがコインケース付ベルト型バングルと言えばいいのか、そんなものを買った。その後、ほとんど日の目を見ないまま保存袋の中で変色してしまったが、とにかくあの心踊るアイテムを手に入れたかった。
革小物部門では大ブランドとして確固とした地位を確立していたものの、LOUIS VUITTONが本格的にファッション界に進出となったのが“ヴェルニ”誕生のその年、1998-1999 A/W 。パリ プレタポルテ・コレクションにマーク就任と同時に初参加ということはわたしの知っているヴィトンのコレクションは全てマークジェイコブスによるものだったのか!と今になって気付かされた。
ここで改めて過去のコレクションを見直してみた。プレタポルテに参加した当初、シンプルなデザインスタイル(ニューヨークっぽい)が伝統あるフランスブランドに相応しくないとの酷評を受けたり、贅沢な素材との相反する組み合わせに『ユーティリティシック』(実用的×シック・欧米談)と評価されたりと様々な意見があったようだ。
そんな中、『ヴェルニライン』の登場が彼の実力と人気を認めさせるきっかけとなった。
そうこうして名実共に信頼と人気を勝ち得て行った彼のコレクションの中で、私の印象に深く残っているのは01ss、スティーブンスプラウスとのコラボによる、伝統的なモノグラムにマーカーペイントで大胆に書かれた『グラフィティ』。03ss村上隆とのコラボによる『モノグラム・マルチカラー』など、Bagをコレクションに使う事により表現の幅を広げて行った。そして、それらは間違いなくヒットを飛ばした。
04-05AWは特に好きなコレクションだった。毛皮を本格的に取り入れたというコレクションは、ロマンチックな雰囲気とパンクテイストが混在する斬新なもので、ダークなレッドのリップ使いが素敵だった。
そして最近だと、12-13AW。夜のプラットホームを舞台に、到着した一等車から高級で洗練されたルックを身に纏った貴婦人が出てくるというオシャレなものだったし、13ssは初めてダミエをモチーフに大柄な格子をプリントに60’sドレスでインパクトを与えた。
そして、今回。“グラフィティ”のボディスーツから始まった様に、過去のコレクションから噴水やエスカレーターなどゆかりのあるコンセプトアイテムを引っ張り出し、それを印象的にまるごとブラックに染めた厳粛な雰囲気の中、さらにブラックのルックでコレクションは進んだ。それはプレタポルテの名に相応しく、デニムやレザーとの異素材の意外性のある組み合わせでさえ、ビジューやレースなど繊細で高級にまとめあげ、息が詰るほど美しかった。
マークジェイコブスは自身のブランドに注力すべくヴィトンを離れると言われている。私の中にでさえLVとの歴史がこの様に薄ーくあり、マークのLVはもう見られないのかと思うと寂しい気持ちになるのだけど、その分次のステージで余す事なく実力を爆発させてくれると思うと楽しみで仕方ない。
とりあえず、ここまでの隆盛期を築いた彼に大いなる拍手を!
後任は前バレンシアガデザイナーのニコラ・ゲスキエール。そっちもかなり楽しみ。